毎年11月のさくらんぼフォーラム。今回で6回目。さくらんぼで働く職員が、さまざまな職種の中からの介護を通し、体験的に学んだことを報告し合うことで、今後の介護に役立てていこうという場です。今回は、利用者のご家族の方にもお声かけしたところ、12家族の参加がありました。
 今回、発表したのは、デイケアサービス、リハビリテーション、訪問看護、在宅介護支援センター、2階東ユニット、安全対策、3階東ユニット、3階西ユニット、2階西ユニット、排泄対策の10の部門。
 11月28日午後6時からデイフロアで開催しました。







「通所サービス利用にあたって〜老夫婦の在宅生活をささえる」

畑中之昌、杉山誠、杉坂恵美子、城野誓子、伊達百合子、間柄めぐみ、坂田妙子、小林さつき、長谷川里香、谷口真理、佐々木ゆかり

 パーキンソン病の悪化で要介護レベルの高い妻との在宅での生活を希望される夫。入院されていた妻の退院が決まり、以前利用されていた
通所サービス(デイケア)を再開したいとの意向を示されました。しかし、立つことも移動することも困難で、さまざまの動作には重介助が伴うので、医師は在宅復帰は困難との所見。それでも在宅生活を希望される老夫婦をどのよう
に支えていくことができるかという、一連の取り組みを報告しました。
 以前、さくらんぼを利用されていたころと比べ、ADLは低下しており、在宅介護は危険で、理学療法や管理栄養士、看護師ら各分野の担当者で情報を共有し、協議が必要と判断。
いったん、退院を延期し、在宅生活の可能性を探ることにしました。
 夫には、食事介助やオムツ交換を指導のうえ、施設内での食事については入院先の管理栄養士から情報を得てメニューを決定。自宅と施設の間の送迎も、本人の疲労が強いのでできるだけ移動時間が短くなるよう配慮のうえ、施設内でも休憩やトイレ誘導を頻繁に行うこととしました。





「自宅訪問調査を実施して」

中世古真弓、東かおり、東川佐和、柳瀬純子、杉浦美奈子

 従来、ご利用者の自宅での状況は、ご本人、
ご家族の聴き取りやアンケートによる情報収集となっていましたが、今年1月からはご自宅を訪問することで、実際の生活場面で生かせるリハビリ計画の作成に役立てました。
 自宅訪問のメリットは、ご利用者にとって何が問題なのかを把握でき、通所リハでその部分へのアプローチが可能になること、ご自宅のベッドやポータブルトイレの配置、住宅改修などに関する助言をしたり相談に乗ったりすることができること、ご家族に実生活の場で介護方法を指導
できること、ご自宅及びその周辺での転倒などの事故の危険性を把握し事故防止について助言ができることです。
 例えば、「一人でトイレに行けるようにしたい」という要望があったとき、何を解決すればその要望にこたえられかがわかり、リハビリを通し、一人でトイレに行くのに必要な動作を回復できる可能性が広がります。また、住宅の構造に対応したリハビリ・プログラムづくりや、住宅改修や福祉用具の利用についても検討できます。
 実際に、そのような改善例があったことを報告しています。





「終末期を在宅でと望んだ家族の支援」

高岡聖子、北川より子、松岡ふく子
 
 余命わずかと伝えられた92歳の女性の最期を家族のいる家で迎えさせてあげたいという家族の思いがかなうよう支援した事例を報告しました。
 終末期は自宅でという家族の希望をかなえるため、さくらんぼを退所され、ご自宅への訪問看護が始まりました。
 四世代同居という家族形態の中、だれがどのような役割を持てるか、それぞれの分担を話し合いながら、日々、状態が悪化していく中、安らかな最期が迎えられるよう、出来ることを精一杯やってみようという取り組みでした。
 地元の主治医と、さくらんぼ訪問看護ステーションが連携。主治医の指示に従い、苦痛の緩和や清潔の保持に努めるための活動を続けました。ご家族に対しては、今後たどる経過の中で起こりうる事態を説明、それらへの対応や連絡態勢を確認しました。
 いつ呼吸が止まってもおかしくない状況の中で、家族が慌てず連絡をなどと打ち合わせました。
 さくらんぼの訪問看護だけでなく、他施設の訪問介護や、頻繁に訪問するケアマネジャーの存在もあり、職種を越えた介護協力と家族の関わりの中で約1か月間のバックアップ体制をとりました。
 ご本人の死から2週間後、自分たちのケアがご家族にとって意味のあったことだったかどうかの確認の意味も込めて、グリーフケア(悲しみをやわらげるサポート)を行いました。その際、ご家族からは「何もえらいこと(大変なこと)はありませんでした。皆さんに助けていただいたおかげだと思っています。このまま点滴を続けるのか、続けないのか、どっちがおばあちゃんにとって幸せなんやろと悩んだこともありましたけど、最期を看取ることができ、後悔していません。満足してますんさ」とのお言葉をいただきました。






「飯南町の高齢者が元気に暮らしていただけくための支援介護予防の必要性と、在宅介護支援センターの役割」

大久保宏美、岡本亜美

 在宅介護支援センターの事業は、松阪市の委託によるもので、65歳以上の人でいまは介護を受ける必要はないが、今後そのおそれがあり、援助や相談、教室の開設などで介護が必要な状態になることを予防することです。在宅介護支援センターさくらんぼの担当エリアは、昨年度まで飯南地区の本郷・有間野だけでしたが、今年度から飯南地区全域に拡大しました。
 飯南町には元気な高齢者がたくさんみえます。しかし、皆さん、いまより自分の体が不自由になること、ぼけることへの不安を身近に感じています。地域の人とのふれあいを通し、高齢者の方が介護を受けなくても元気に生活し続けられるよう支援していきます。





「Sさんへの食事援助〜食欲回復をめざしたチームアプローチ」

中村加津代、栃木文子、近藤亜香里、杉本純子、大西やすみ、加藤啓仁、杉本理紗、鈴木千裕、塚本敬司、河内由美子、森本佳子、青木江里子

 食事の量が主食で5割、副食で1、2割程度に減り栄養状態が悪化したSさんに対してユニットのチームアプローチとご家族の協力で支援しました。
 Sさんにとって必要なカロリーを補うため高カロリーゼリーや高カロリージュースなどで補おうとしましたが、改善されず、栄養状態の悪化が著しいため、医師をまじえ、胃瘻造設を検討しました。しかし、ご家族は希望されず、相談の結果、ご家族に食事の様子を見てもらい介助をお願いしたところ快諾を得られました。そして、ご家族の要望で、別料金が発生するが好物のうどんをお出ししたり、ご家族持ち込みの食事を許可したり工夫を重ねるとSさんの表情が明るくなり、食事に対する意欲が少しずつ回復するようになりました。ユニットのイベントでお好み焼きを用意したときも「おいしい。おいしい」とたくさん食べていただけました。
 食欲が落ちた原因は分かりませんが、ご家族のご協力と、好みについての情報提供で改善された例です。








「安全対策委員会での取り組み〜 委員会に入って 今、思うこと」

板谷佳大、杉本理紗、山出幸穂、石橋直貴、城野誓子

 ご利用者のヒヤリハットから、職員の通勤時の交通安全まで、「安全」にかかわること全般について意識を高めるため、問題の把握から傾向の分析、対策までを公表するなどして成果を上げています。
 この中の1つ、介護ルールの自己点検。安全面に問題のあるケアの状態を改善するため、全職員の意見をもとに基本的な介護のルール化を行い、全職員に「○」か「×」で自己点検をしてもらっています。特に「×」が多かった項目について改善してもらえるよう働き掛け、改善を呼び掛けています。
 こうした活動をへて、職員の中からは、ご利用者の安全を考えることができるようになったという声が聞かれるようになりました。






「認知症の人と向き合う〜混乱した生活を緩和するサポート」

井村君代、森山秀樹、山出幸穂、青木豊、吉田朋生、辻井愛、嶋田倉子、小倉樹里、竹内恭子

 日々の生活の中にご自分の役割を持ち、ほぼ自立されていたご利用者に、食事の拒否や居室への引きこもり、入浴拒否などの問題が発生しました。職場の職員の異動に伴う新しいスタッフとのかかわりなどを機に精神的に混乱が生じたのではとの推測のもと、見守り(観察)をしながら不安や混乱をもたらしている原因はなにかを見きわめ、その原因をとりのぞいていく必要性を理解しました。
 このご利用者にとっての「生活の混乱」を最小限にとどめ、メリハリをもった生活を送っていただくことを目標に、職員が統一した対応ができるよう、考えました。
 職員がまちまちな対応をしていては動揺を引き起こすので、ユニットの職員が統一した方向性をもって対応していくことで、このご利用者本来の姿を回復していかれたようです。
 こうした経過の中で留意しなければならないのは、なじみの関係が強いからといって、関係性の中にどっぷりと浸かっていては職員として冷静な判断や対応ができなくなるので、一定の距離をおいてご利用者の不安や生活に支障をもたらして
いる原因は何かに目を向けられるよう、観察してかかわることの意義も確認しました。

 






「心地よい入浴を目指して〜入浴拒否の方へのかかわりを通して」

甲斐幸恵、増田幸造、石橋直貴、森本美鈴、小島恭子、玉井秀秋、塚本美穂、柳瀬瑞代、関谷恵美子

 入浴嫌いで無理に勧めると興奮されてしまうBさん。理由をお尋ねすると、胸の傷を見られたくない、一番最後に自宅の風呂に入り掃除しなくてはいけないので自宅で入る、他人のお風呂だから、というものでした。このことを踏まえ、快適に入浴していただける方法を模索したところ、「気持ちええわ」と喜んでいただけるようになりました。

 脱衣場が一番嫌がられるのですが、実際、お風呂に入ると入浴自体は楽しまれている様子。そこで、嫌がられる理由を聞いていくことで、嫌だと言われる部分を改善しながら声掛けや態度を変えるなど援助方法の試行錯誤を繰り返していったところ、Bさんの言動にも変化が見られ、穏やかなに入浴していただけるなど安心感が芽生えたようです。
 結果から振り返ると、Bさんにとって入浴は「苦痛」であるのに「入浴は癒しになるもの」という職員の側の価値観を優先してきたため、入浴誘導が強制となりがち。つねにBさんの意思を確認する姿勢でのぞまなければならないものなのです。





「Aさんの安心できる環境を求めて〜認知症に伴う周辺症状の緩和」

森下保、前田みずほ、安田ゆり子、竹谷吉浩、工藤仁実、田中幸代子、板谷佳大、院田小百合、中西瑞枝、杉本三枝子

 夜間も居室内で過ごせず廊下で寝てしまうので廊下にソファーを置いたり、談話室に畳のスペースを確保したりした結果、廊下で横になられることはなくなり、自らソファーや畳スペースに行かれるようになりました。
 Aさんの居室に戻ろうとしても逆効果なので、無理に移動させたり否定したりせず、落ち着かれるまで付き添って会話をしたり、少し離れた場所から見守りをしました。ただ、決してその方の言いなりになるのではなく、その行動の背後に隠れているものを少しでも理解し、その人に合ったケアを導き出していけるようにするため、効果のあった試みはチームみんなで共有して今後の対応に生かしていくことが大切です。







「個人にあった排泄環境の整備について」

辻井愛、中村加津代、工藤仁実、小島恭子、伊藤行恭

 ご利用者個々の排泄環境を見直すことを目的に平成 年度に発足した委員会です。特に排泄介助は、「見られたくない」「恥ずかしい」行為への援助なので、ご利用者の自尊心を傷つけることにもなります。一方で、介助を通して生活機能レベルの改善につながることもあり、意義の大きいことです。
 たとえば、オムツ利用の方でも、座ることが可能ならトイレでの排泄が可能となり、排泄の自立を回復する手助けにつながる可能性もあります。
 トイレでの排泄が可能となったことで、離床している時間や会話時間が増え笑顔で談話室で過ごされるようになった方もあります。
 これは排泄委員会から各職種にトイレでの排泄の意義を伝えたことで展開されるに至ったケースです。


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